不安定な天気の合間を縫って、22日(金)、糸魚川市の蓮華温泉から白馬岳へ日帰りで行ってきた。
早朝2時30分に起床。空には星が見える。北陸道に乗り、糸魚川インター下車、蓮華温泉に向かううねうねとした長い林道を進む。冬の星座オリオン座が東の空に見える。空が白み始め、雪倉岳から朝日岳の稜線が浮かび上がると、5時前に蓮華温泉駐車場に到着。不安定な天気もあってか、駐車場の車は少ない。朝食を取り、5時5分出発。蓮華温泉のロッジの裏から登山道が始まる。
淡々と進み、木々が少なくなったと思ったら、6時55分、白馬大池に到着。ここまで1時間50分。いいペースだ。気持ちのいい白馬大池山荘のベンチで休憩を取らせてもらい、山荘から出てきた男性と会話を交わす。
ここから小蓮華山目指して白ザレの尾根を進んでいく。振り返ると、満々と水を湛えた白馬大池の向こうに、妙高連峰が見守ってくれている。![イメージ 2]()
尾根の左側、白馬村方面は一面の雲海が広がっていて、絶景だ。先行していた美しい2人の「山レディ」さんたちに、記念撮影を頼まれる。わたしにも「写真取りましょうか」と(愛想で)言ってくれたが、グッとこらえて遠慮しておいた。
8時ごろ、新潟県最高峰の小蓮華山(2,769m)に到着すると、結構な人で賑わっていた。一時、山頂が崩落して落下した「鉄剣」は、引き上げて修復されたらしく、反対側に移設、再建されていた。とても大変だっただろう。首のない地蔵様に手を合わせる。白馬岳をはじめ、後立山連峰の山々が美しい。
雪倉岳、朝日岳へと延びる稜線は、対照的に限りなくたおやかだ。
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景色を楽しみながらしばし休憩した後、新潟、富山、長野三県の境であり、三叉路である「三国境」へ下る。そこから急な登りが始まるが、たくさんの高山植物が励ましてくれる。日差しは強く、昨日までの雨が嘘のようだ。風はドライで涼しく、どこまでも心地よい。と、思ったら、途中からなんだか「匂う」のである。
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9時18分、白馬岳山頂(2,932m)に到着。思い切って来てよかった。我が故郷の妙高連峰や戸隠連峰、後立山連峰や立山、剱岳、八ヶ岳、おまけに富士山まで、360度の大パノラマがを楽しみながら大休止。登っている途中で「なにか匂う」と思っていたのは、白馬山荘のごみ焼却によるものだと分かった。登山者の数は半端ではないので、ごみもかなりの量が出るのだろう。すばらしい景色とは対照的に、黒々と立ち上る煙に複雑な思いを抱いた。
休んでいると、白馬山荘側から一人の若い女性が上がってきた。しきりに景色を見て感動の言葉を述べている。女性はわたしに「富士山が見える」と教えてくれたのだが、実はそれまで富士山が見えていることに気が付いていなかったのだ。登山者かと思ったら、このかたは、このすぐ下の山小屋でアルバイトをしているとのことで、これほどまでにすばらしい天気は、久しぶりらしい。
30分以上休んでいたら、あまりにも涼しくて、少々手がかじかんできた。
9時55分、下山開始。三国境の分岐を目指して下っていくと、途中で追い抜いた何組かとすれ違う。境の手前で、先ほどの「山レディ」お二人と再会し、互いに「お気をつけて」と言葉を交わす。
三国境から左に折れ、「雪倉岳・鉱山道」方面の道に入っていくと、道の様子は一変。踏み跡や人の気配は、極端に少なくなる。ザクザクと白ザレの斜面を下っていくと、巨大な岩のオブジェが迎えてくれた。残雪や長池と呼ばれる池の向こうには、雪倉岳~朝日岳のなだらかな稜線がどこまでも続いている。振り返ると、白馬岳の頂からは、雲が勢いよく上がっている。たぶん白馬村方面から立ち上ってきたガスなのだろう。天気は確実に下り坂だ。
それにしても静かである。聞こえるのは、風の音だけ。道跡は不明瞭で、赤いペンキマークが頼りだ。ガスっていたら、簡単にミスコースしてしまうかもしれない。
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分岐から右に折れ、いよいよ「鉱山道」が始まる。いつしか白ザレは黒ザレに変わり、不明瞭な道跡をペンキマークを頼りに下っていく。道跡は、更に不明瞭になる。風がなくなり、暑さが戻ってきたところに、「うまい水」と赤ペンキで表示された水場に到着。ここの水は冷たくて、格別だった。
しかし、たくさんの珍しい花々が咲いていて、限りなくのどかだ。来てよかった、としみじみ思う。先を急がず、のんびり行くことにしよう。
下っていくと、「塩谷精錬所」跡に到着。こんな山奥の雪倉山と小蓮華山のすぐ麓に精錬所があったとは、ただただ驚くしかない。「鉱山道」は、雪倉銀山開発の際に開かれた道で、すでに大正時代には廃坑になったらしい。明治27年には、ウェストンがこの道を辿って白馬岳に登ったとのことだ。
下っていくと、「塩谷精錬所」跡に到着。こんな山奥の雪倉山と小蓮華山のすぐ麓に精錬所があったとは、ただただ驚くしかない。「鉱山道」は、雪倉銀山開発の際に開かれた道で、すでに大正時代には廃坑になったらしい。明治27年には、ウェストンがこの道を辿って白馬岳に登ったとのことだ。
糸魚川から望む白馬岳や小蓮華山などの山並みは、「蓮(ハス)」の花びらを連想させる。「蓮華」とは、実は新潟県からの白馬岳の呼び方で、その手前にある山を「小蓮華山」と呼んでいたのではないか。今回、鉱山道からの白馬岳や小蓮華を望み、そう感じたのだが、実際にはどうなんだろう。
正午を回り、雲行きがだんだんと怪しくなってきた。途中、雪渓の残った沢と遭遇する。雪の上に乗って対岸へ渡るには薄そうで、見えない落とし穴だらけだ。しかたなく、雪の隙間から沢へ降り、残雪のトンネルをくぐることに。「崩落しないでくれ」と祈りつつ、雪渓のトンネルの下をしばらく行き、適当なところから力ずくで雪渓の上に再びよじ登る。なかなかスリリングだった。
「神ノ田圃」という池に差し掛かる。この平らな場所には、鉱山の事務所があったらしい。
振り返ると、小蓮華山の上には雷雲らしい雲が。登山者たちは大丈夫だろうか。
更に下っていくと、道のど真ん中に、なにやら真っ黒なドロッとした物体が。まさしく「クマの糞」だった。鉱山道に入ってから、だれにも会っていない。が、こんなところでクマに遭うのはごめんである。ピーピーとホイッスルを吹きながら進む。
右手には、蓮華菱といわれる白いみごとな岩壁が立ちはだかっている。
瀬戸川の渡渉は、少々心配していたのだが、立派な仮設橋が掛けられていて安心した。川の流れは、澄み切っていて美しかった。黒いガレ場を登り、快適な「蓮華の森の自然歩道」に入った辺りから雷雨が。幸いなことに、巨木の下を通るので、雨が当たりにくく、合羽を着る必要はなかった。
しかし、雷はすぐ近くで鳴っていて、少々ビビリながら蓮華温泉へ。14時25分、無事に蓮華温泉駐車場に到着。上りよりも大幅に時間をオーバーして駐車場に到着すると、雨は本降りとなった。ああ、助かった。
悪天候の合間を縫っての9時間20分の「白馬岳単独行」は、なかなか充実した山旅だった。特に鉱山道は、かなり手強く、骨が折れたが、静かで楽しい山歩きが楽しめた。反面、歴史深い道なのに、だれにも会わなかったのは、少々複雑な思いがした。
追伸:下山してから首の日焼けに苦しんでいます。くれぐれも日焼け対策を万全にされることをお勧めします。
〇山行日時 2014年8月22日(金)
〇山行地・コース 糸魚川市・蓮華温泉~白馬大池~小蓮華山~白馬岳~鉱山道経由~蓮華温泉
〇メンバー わたし単独
〇山行地・コース 糸魚川市・蓮華温泉~白馬大池~小蓮華山~白馬岳~鉱山道経由~蓮華温泉
〇メンバー わたし単独